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医療・健康分野 山口大学医学部 システムバイオインフォマティクス講座
AI医学・医療研究教育センター 教授
浅井 義之

あさい よしゆき

 

略歴

1998年  3月 大阪大学基礎工学部生物工学科卒業
2000年  3月 大阪大学大学院基礎工学研究科システム人間系博士前期課程修了
2003年  3月 大阪大学大学院基礎工学研究科システム人間系博士後期課程修了
2005年  4月 独立行政法人産業技術総合研究所 人間福祉医工学研究部門 研究員
2009年  4月 大阪大学臨床医工学融合研究教育センター 特任准教授
2012年  4月 沖縄科学技術大学院大学 研究員
2016年10月 山口大学大学院医学系研究科システムバイオインフォマティクス講座 教授
2018年  4月 山口大学大学院医学系研究科・医学部附属病院 AIシステム医学・医療研究教育センター センター長
現在に至る。

 

受賞歴

2016年 日本太陽エネルギー学会学会賞 沖縄における直流マイクログリッドシステム実証試験
2012年 計測自動制御学会 計測自動学会賞(技術賞)Physiome.jpにおける統合生命化学推進のためのプラットフォーム開発

 

メッセージ

 当講座では、システムバイオロジーとバイオインフォマティクスならびに機械学習の観点から、生理機能、病理の解明、そして病態の予測や新薬の創出など医学・生理学に貢献する知見・技術の創出を目指しています。
 これまでの生命科学は、ゲノムからはじまり、タンパク質、細胞、組織、そして臓器・身体レベルまで、生理機能の各階層においての研究が中心となっていました。2003年に達成されたヒト全ゲノム解読以降、次世代シーケンサーの登場とバイオインフォマティクス手法の開発により、疾患に関連するゲノムの情報は増大し続けています。時をほぼ同じくして、これまでに蓄積された膨大な量の知見を統合して生理現象の総体を理解しようとするオミクス研究の1つであるフィジオームと、生理機能をシステム論的観点から理解しようとするシステムバイオロジーが隆興してきました。これまでの生命科学が、遺伝子やタンパク質などの分子に着目していたのに対し、システムバイオロジーでは、モノが構成するネットワーク(システム)の動き(ダイナミクス)を主な研究対象としています。
 システムバイオロジーの立場から生命機能を見直すと、疾病状態というのは健康状態に対応する生体のダイナミクスが変調を受け生存にとって不利益をもたらす状態であると解釈することができます。これまでは、疾患を引き起こす原因を解明し、その部位を元に戻そうというアプローチがとられていました。ダイナミクスに立脚するアプローチでは、疾患の原因部位を元に戻さなくても、別の部位を調節することで乱れたダイナミクスを元に戻し治療することができる可能性が考えられます。これを実施するには、システムバイオロジーに加えて近年発展がめざましい2つの解析技術を導入する必要があります。1つは、高度な統計学を用いて遺伝子解析を行うバイオインフォマティクスです。もう1つは、大量のデータを構造化することで未知の知識を顕在化する人工知能(AI)・機械学習技術です。
 当講座では臨床・実験系の研究室と積極的に共同研究を展開し、神経系の情報伝達機能、膵臓内分泌機能、心機能、薬物動態などに関するモデルを作成し、シミュレーション研究を展開しています。これらのモデル開発には研究者間でのモデルの共有や再利用が必須であり、それを円滑に行うためには適切なソフトウェアによるシステマティックなサポートが必要です。当講座では、生理機能の多階層モデリングやハイパフォーマンスシミュレーションを支援するためのソフトウェアの開発も行っています。また、モデル構築の基盤となるバイオインフォマティクス手法の研究も行っています。