水道事業の現状
水道事業において、水道管の老朽化による漏水は、貴重な水資源を無駄にするだけでなく、道路の陥没等、大きな問題につながることから、社会的な課題となっている。
水道管敷設は、高度経済成長期の1960~70年代に集中しており、法定年数を超えた管路割合が増加していることなどから、今後も漏水事故の増加が予測される。
また、原則水道料金収入で運営されている水道事業では、今後も人口減少に伴う給水量の低下から給水利益の減少が見込まれる。一方で、老朽化施設の更新需要や耐震化に伴う費用は増加する見込みであり、水道事業の経営環境は非常に厳しくなると予測される。
そのような中で、水道管は、地中1~2mに埋まっていることから、漏水検知作業は、①ブロックごとの流量監視、②弁栓等の音圧監視、③音聴調査、④多点相関調査などがあり、日々の送水量を分析し、色々な調査方法を利用して実施され、時間と手間を要する。多くの自治体で採用されている音聴調査では、戸別や路面での確認作業のため、自動車等の影響がない夜間での実施となり大きな負担となっている。検知作業には多大な時間とコストがかかり、効率的な漏水調査のためには、広範囲の水道管から調査場所のより一層の絞り込みが求められている。
研究開発概要
当社は、これまで、一般財団法人リモート・センシング技術センターと協力し、様々な地上データとSAR衛星データを活用した日本に適した高精度水道管漏水検知について検証を行ってきた。
2022年に、経済産業省の衛星データ利用環境整備・ソリューション開発支援事業において、過去の修繕データを用いて漏水可能性箇所の推定モデルを構築し、実証を行った。その結果、漏水箇所を推定し、調査対象を絞り込める可能性があることを確認した。
2023 年に、山口県産業技術センターの衛星リモートセンシング関連システム等開発業務により、漏水可能性箇所を検出するためのシステムを構築し、県内の4市で実証を行った。システムの構築では、漏水可能性箇所を10mメッシュのピンポイントで推定し、それらの情報を元にヒートマップを作成するシステムを構築した。実証の結果、漏水調査において高いスクリーニング効果が得られることを確認した。
本事業では、サービスの全国展開を実現するために、システムの更なる効率化と漏水可能性箇所の推定精度の更なる向上に取組む。
【本事業の特色】
日本のような湿潤な土壌において、地表近くの水分を10mメッシュの粒度で検出する技術をコアとし、全国の水道事業者の方の事情・ニーズに応じて漏水可能性マップの出力様式(表現方法なども)をカスタマイズする。